人の心を動かす面接術とは?観客総立ちのTEDプレゼンから学ぶ。
TEDを面接に応用してみよう
TEDって何?
TEDはアイディアを共有するためのコミュニティです。先月の記事でも話題提起に使いましたが、知ってると知らないでは人生の視点が変わるものばかり。知らなかった人は、今回のプレゼンテーションから、ぜひTEDの世界を旅してみよう。
全部で2,000本の動画があります。うっかりしていると丸1日潰れるので注意。今回の「ボディランゲージが人を作る」の他には「やる気に関する驚きの科学―ダニエル・ピンク」がおすすめです。アプリの倍速機能の利用をお勧めします("Ted iSub"というアプリを使うと再生速度を調整できる)。
美人教授の「ボディーランゲージがあなたをつくる話」
そんな数多くの動画の中でも、今回紹介するエイミー・カディのTEDプレゼンは、間違いなくTED史上最も感動的で役に立つスピーチでしょう。
講演者に「ガンバレー」「負けるなー」「ピーピー(口笛)」と声援を送る場面は、いかにヤジの国アメリカといえど、めったにありません。
ちなみにぼくは既に20回ほど視聴しており、大の大人なりに毎回うるうるしてます。カフェでスマホみながら泣いてる男がいたら、きっとぼくです。
あらすじ
肝心なあらすじを引用します。
私たちのするボディランゲージは、自分に対する他の人の見方に影響しますが、自分自身の見方にも影響します。社会心理学者のエイミー・カディは、自信のないときでも自信に溢れる「力のポーズ」を取ることで、脳内のテストステロンやコルチゾールのレベルが変化し、成功できる見込みも変わるのだと言います。
つまり「ボディランゲージがモチベーションに関わる」ということですね。
プレゼンの中で、I'm not supposed to be here.というセンテンスが繰り返されます。意味は「私、ここにいるべき人間なんかじゃないんや」です。関西弁なのは、そっちの方が可愛いからです。
「私、ここにいるべき人間なんかじゃないんや」
可愛いですね。
Im not supposed to be hereを吹っ飛ばせ
- ここにいるべき人間じゃないんや。
というのは、説明会や面接で
- こんないい会社に入れるような人間じゃないんや。
- 採用してくれる企業なんてブラック企業くらいなもんやで。
と感じてしまう人と似ています。就活で一瞬でも絶望した瞬間のあった人ならば、多少なりとも共感できる話ですよね。
ですがこの想いは危険です。「いいとこに入りたい」と思いながら「自分じゃどうせ」という気持ちで就活をするわけですから、精神的に負担がかかるのです。
アクセルを踏みながらブレーキを踏むようなもので、そのままでいると車体がバラバラになりかねません。この感情のブレーキをはずしておく方法は、カディ教授が話してくれています。
さっそくですが
エイミー・カディに登場してもらい 「ボディランゲージの大切さ」について語ってもらおうと思います。いったん、泣いてきてください。
心に響くプレゼンとは一体何か?という視点で視聴することをおすすめします。
観客総立ちのプレゼンから学ぶ、就活面接術
ぼくがこの動画をみて気付いたこと。それは
- 聴衆(あるいは面接官)を納得させるのは、心に感動を生む技術
ということです。
プレゼンの内容のよしあしは、感動には関係ありません。
「プレゼンの内容がよくなかったら感動できないでしょ!」と批判の電話がかかってきそうですが、その内容を本当に「いいものだった」と理解してもらうために、さらなる1つの要素が必要なのです。
…来週もまたみてくださいね!じゃん!けんっ!ぽん!ウフフフフフ!
ごめんなさい。
心に響くプレゼンって、なんだろう?
もう1つ必要な要素とは何か。それを説明する前に、プレゼンの原則について話さなければなりません。
心に響くプレゼンには「原則」がある。
この原則は、就活の面接の際にも使えます。学歴がないとか関係ありません。むしろ、それをもストーリーに取り込めばいいのです。「いやぁー、あの子よかったねぇ!」って人事に言わせたいでしょ。
相手の心に響くプレゼンをするということは、相手にとって「唯一無二の存在」になるということです。
有名大卒なら掃いて捨てるほどいます。それなのに、就活連戦連勝の人間はごくわずかです。この差は何かというと、大企業が欲しがる人間は、自分だけのストーリーに相手を巻き込むのが上手いのです。説得力がある人とは、TOEIC800点の人間ではありません。「TOEIC800をとるために、何を想い、どうしたのか」自分だけの英語勉強のストーリーを持っている人間が「唯一無二」なんです。
「ストーリー」こそが、資格や学歴だけでは採用されない理由であり、実績で負けている人間の攻め入る隙になるのです。
「人の心に響き、人に共感され、ときに涙し応援したくなる。」・・・「ボディランゲージが人を作る」のプレゼンは、まさにそんなステージでした。
・なぜ聴衆は彼女の話に惹きこまれたのか
・なぜ聴衆は彼女の涙にもらい泣きしたのか
・なぜ聴衆はなんなら結婚したいとまで思ったのか(個人的なアレです)
もはや、理屈ではないのですが、この感動の仕組みをぼくの才能あふれたロジカルシンキングにもとづいて説明していきます!!!(ご安心ください。ぼくのロジカルシンキング力は、コンサルの本を買って1分で読むのを諦めたほどです。大丈夫です)
結論からいいます。
心に響くプレゼンの絶対条件は「その人の言葉で語られたプレゼン」です。その人の言葉、これをぼくは「世界観」と呼んでいます。
「1人1人、見ている世界が違う」
ぼくらは1人1人、みている世界がちがいます。
「ボールペン」といわれてゼブラを思い浮かべる人もいれば、Dr.Glipを思い浮かべる人もいるでしょう、友達からもらった外国のバカデカいボールペンを思い浮かべる人もいるかもしれません。
「可愛い女の人」といわれて新垣結衣を思い浮かべる人もいれば、真木よう子を思い浮かべる人もいるでしょうし、森三中を思い浮かべる人もいるかもしれません。
「おっ〇い」ですら、人それぞれイメージが違うでしょう。少し例えが卑猥になりました。おっ〇いの例えはいりませんでしたね。
・・・つまり「世界観」というのは、個々が持っている視点のことです。
我々は、相手の発した言葉をイメージまるごと理解することはできません。言葉をそれぞれの経験に置き換えることでしか、世界をみることができないんですね。
あなたが「私は〇〇に情熱を注ぎました!すごく詳しいです!プロ並みです!どうですか?」といっても、面接官の心には響かないでしょう。
同様に、エイミー・カディが「大学生のときに事故に合って大変でした(テヘペロリンチョ)」といっても、聴衆の心には響かなかったでしょう。
そうではなく「車から放り出され、何回も回転しました。この事故で、私の脳がダメージを受け、IQが大きく低下したことが判明したのです」とストーリー形式で語る彼女の言葉に、聴衆はまるで自分の身に起こったこととして交通事故を追体験し、共感できるのです。
面接官に対しても一緒です。
「この決断をするとき、周囲から・・・と批判を浴びました。それまで仲の良かった友人もなかなか協力してくれず、諦めようかなとも思いました」、、、具体的じゃないんでトロい回答ですが、こんなふうに面接官にも追体験させられます。
そして、カディ教授のプレゼンに戻りますが
アイデンティティを奪われることは―私の場合は知能が優れているということでしたが―とても辛いことでした。
という部分もポイントです。
「IQが高い」というのは特別な立場です。一般的ではないので、聴衆の大部分には共感しにくい部分ですね。だから、この特別な立場を「アイデンティティが奪われる経験」として「一般化」することで、誰にでも共感できる話へと昇華させているわけです。
このプロセスによって、聴衆はその後のクライマックスに自分ごととして惹きこまれ、共感することができるのです。
相手から共感を得て、人の心を動かすということは「自分が経験したイメージ」を自分ごととして相手にも体験させるということです。
2つの準備で、面接に納得感を生む
前準備としては
- 補足の必要な経験をピックアップする
- 面接前に頭の中をリセットする
ことです。
面接官を自分の世界観に引きずり込んでしまえば、足し算で戦うライバル就活生など目ではありません。唯一のあなた、というイメージになります。
1.補足の必要な立場・経験をピックアップする
自分にしか分からない経験があります。
例えばぼくは大学4年間を寮で過ごしたのですが、学生寮というものを知らない面接官は多いです。彼らにそこでの経験を伝えるためには「見渡す限り男ばっかり」「風呂場で毎日会うので、誰のモノが大きいかという情報はみんながシェアしています」「彼女よりも友達とお付き合いしていました」という物悲しい経験をシェアすることで、相手にイメージがわくわけですね!
ここで必要なのは「相手に分かるようにデフォルメする」という作業です。
多少オーバーに表現してもいいのです。「嘘はつきたくない」といっている就活生は「相手に責任を持ってイメージを伝える」責任から逃げているだけ。
自分のことを分かってもらうのって、自分の話に興味を持ってもらうのって、楽しいことです。また面接官はひたすらお経のような就活生の自己アピールをきいていることもあるので、喜ばれますよ。
2.世界観を出すために、面接前に全てを忘れること
忘れてはいけないのが、自分の言葉で伝えること。
そのためには、プレゼンの構成を練りまくり、場数を踏みまくるプロセスを踏んだ後で、頭をまっさらにしてプレゼンに臨む必要があります。
カディ教授は、頭の中で覚えたことをしゃべっているわけではありません。余裕で噛んだり、言い間違えたりしています。でも、それでいいのです。それでこそ人間はライブ感を持って、話に惹きこまれるからです。
これって面接にも応用できますよね。前日までに考えられる質問を全て消化して、当日は頭を真っ白にして望むのです。
自分をつくる就活生の多くは、素の自分が受け入れられるのが恐いから、人から与えられた就活像に頼ります。その結果、他の似たような学生と比較され、落ちたり受かったりする。たいしてオリジナリティのある学生は、何度質問をされても微妙に異なった言い回しで、自分の言いたいことを伝えきります。
大塚製薬の最終面接で泣いた人がいます。面接官に「無理してない?」と詰められすぎてその場で大泣きし、腹を割って話したそうです。「そこで初めて素直な自分が出せた。評価とか気にせずに、本来の自分が出せたの」と。結果、彼女は内定しました。
また「自分が人より優れているところなんてありませんが、職種への適性はあると自負しています」と開き直った結果、見事内定した人もいます。
何を言うかではありません。面接官があなたの世界観に触れ、そこに共感し納得すれば内定は出るのです。この2人は、たまたまタイミングよく自分の世界観を提示できました。しかしたまたまではなく、コントロールしてプレゼンできる人はワンランク上のステージにいる人です。
このエイミー・カディはまさに、ワンランク上の(というかずっと上の)世界観を操れる人です。相手に自分をよく見せる気などないでしょう。相手を泣かせようとも思っていないでしょう。
ただ、自分の体験をいかに相手にも共感してもらい、学びを得てもらうか。新しい視点を得てもらうか。そこに徹底的にフォーカスした。
だから伝わったわけです。
まとめ
就活をしていると、どうしても就活という市場の中で価値観が終始してしまい、就活というシステムの抱える矛盾にフォーカスしてしまいがちになります。だからこそ「就活はゲーム」だと考えるやり方には一定の効果がある。
答えは企業の中にあり、キャリアコンサルタントの中にある―と考えてしまいがちですが、それは間違っています。就活というモノ自体、大手人材会社のつくった一種の「商品」なのですから、本当の「就活」のプロはあなた自身でしかないのです。
誰よりも真剣に、誰よりもあなたのことを考えられるのは誰ですか?
参考記事:(null)